1
概要
工業製品の色の品質管理において、従来の色見本などの実物の基準を用いた管理から、デジタルカラーデータを基準とした管理であるデジタルカラーコミュニケーション(以下、DCC)へ移行することで、色見本による管理で実施していた色見本の作製、値付け、サプライヤーへの配布、管理作業を廃止し、作業の効率化、コストダウンを実現することが望まれている。しかしながら、DCCを実現するためには測色計間の性能差(以下、機器間差)を出来る限り小さくし、また装置の測定条件をサプライチェーン間で統一させて、出力するカラーデータを同じ尺度で比較できるようにする必要がある。さらに近年、自動車、電機・スマートフォン、建材など、幅広い分野において、高意匠性を目的とした暗色や小物・曲面形状の品質管理が難しい工業製品が増えてきている。我々はこれらの顧客課題を解決するため、従来機より機器間差が小さく、高精度で、測定しやすい縦型ポータブル分光測色計『CM-17d』を開発した(Fig. 1)。

Fig. 1 CM-17d Spectrophotometer
2
詳細
■構成
CM-17d では、測色における照明および受光の幾何学条件に関して、JIS Z 8722の幾何学条件c1) に準拠した「拡散照明/ 8°方向受光(以下、d : 8ジオメトリ)」を採用している。d : 8ジオメトリでは光源からの光を積分球の内壁面で拡散反射させ、試料に対してあらゆる方向から均等に光を照射する。試料からの反射光のうち、試料面法線に対して8°方向に反射する光を回折格子で分光した後、センサで受光し、センサ出力値から分光反射率の算出、色の数値化を行う。積分球には開閉式のライトトラップが備わっており、8°方向の正反射光を含む測定SCI(Specular Component Included)と、正反射光を含まない測定SCE(Specular Component Excluded)を自動で切り替えることができる(Fig. 2)。

Fig. 2 Internal configuration of CM-17d system
■機能/特長/用途
①正確に測定位置がわかる電子ビューファインダー
電子ビューファインダー機能で、測定箇所を簡単に画像で確認できるため、正確な位置合わせが可能である(Fig. 3)。従来機『CM-700d』2) との測色互換性を維持するために、測色における同じ幾何学条件を保つために、ライトトラップの開口から覗くように、カメラを配置して実現している(Fig. 4)。

Fig. 3 Electronic Viewfinder

Fig. 4 Electronic Viewfinder system of CM-17d
②安心してDCCに活用できる高精度な分光測色計
従来機に比べ機器間差を約4割縮小し、また繰返し性が大幅に向上させたことにより、ピアノブラックなどの暗色の工業製品のDCCに活用できる仕様になっている(Table 1)。さらに、分光測色計の波長方向の変動を自動検出し、補正するコニカミノルタ独自技術である「WAA (Wavelength Analysis & Adjustment)」機能を搭載し、信頼性を大幅に向上させた。
Table 1 Performance comparison with conventional model CM-700d

⓷作業性を大幅向上
無線LANやBluetooth通信による外部機器とのコードレス接続が可能になり、作業性が向上している。また、ゼロ校正ボックス、白色校正キャップの収納や充電機能を備えるクレードル(Fig. 5)を備え、使用後の片付けが容易になっている。

Fig. 5 Cradle for charging
■今後の展望
DCCに活用できる高精度で使いやすい『分光測色計 CM-17d』の基本技術と新規搭載機能について紹介した。今後は、新材料の開発、工業製品の品質管理、生産現場の検査自動化に加えて、さらなる活躍の場を拡がることを期待する。