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概要
コニカミノルタではこれまで、ディスプレイ市場向けにセルロース系の材料を用いた偏光板保護膜および光学補償膜の事業を展開してきた。近年のディスプレイの大型化やモビリティ分野での高耐久ニーズに伴う耐水性、光学安定性の要求やセルロース系に替わる耐水材料への期待の高まりを受けて、次世代アクリルフィルムSAZMA(サツマ)を開発した。SAZMAは独自の処方設計とプロセス設計により従来のアクリルフィルムでは到達できない表面加工のしやすさと光学等方性を特徴とし、結果、ユーザー企業の開発設計者に対して表面加工や表示パネル構成等の設計変更の自由度を後押しする製品である。またSAZMAには資源を有効活用する工夫を取り入れており、サプライチェーンを通じての生産性向上や環境負荷の低減にも貢献する。展開先は偏光板用途のみならず様々の最先端ディスプレイでの活用にむけて進行中である。
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詳細
■構成
前回のレポートではSAZMAのコンセプトを報告1) したが、今回は主に偏光板用途での使用を想定し開発した表面保護用基材のSAZMA-Sとゼロ位相差基材のSAZMA-Zの2種類を紹介する。以下に代表的な物性値をTable 1に示す。
Table 1 Specifications of SAZMA film.
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コニカミノルタの製膜プロセスの紹介
ポリマーの製膜方法は、大きく2つの方法に大別され、 溶液製膜法と溶融製膜法がある(Fig. 1)。溶液製膜法には、ドラム方式とベルト方式がある。コニカミノルタでは、以下の特徴を持つ溶液製膜法のベルト方式を選択している。
- 高分子量ポリマーの使用が可能である。低温加工であるため熱に弱い添加剤も選択できる。
- 生産時に発生する不要な端材フィルムを再溶解してリサイクル可能である。
- キャスト後の乾燥時間制御が容易であり薄膜化に有利である。
また、溶液製膜で作成したフィルムを後延伸することで2.5 m超えの広幅にも対応できる設計となっている。
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Fig. 1 Three different casting processes.
■機能/特長/用途
SAZMAは従来のアクリルの弱点である扱いにくさを改良した製品である。材料・添加剤技術及びプロセスの工夫により以下の特徴を持つ。
- 表面エネルギが高く平滑であり加工しやすい表面状態となっている。また、しなやかな基材であり従来のアクリルフィルムと比較して約1.8倍の強靭性を備えている。(Fig. 2)
- 応力複屈折を低く制御しており外力で位相差が変化せず表示装置に組み込んでもムラにならない(Fig. 3)。また、低リタデーション基材であるため種々のバックライトと組み合わせても干渉縞や虹ムラが発生しない。
結果、開発者の塗工や型押し等の表面加工設計の自由度やその先の表示装置に組み込むパネル設計の自由度に繋がるものとなっている。
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Fig. 2 SAZMA is much more tough than general Acrylic.
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Fig. 3 Observation in a cross-Nicols State.SAZMA has low photo-elasticity and does not show any non-uniformity even when stress is applied.
さらに、SAZMAは巻形状の変化が最小限になるような工夫を施しており、生産現場での長期保管性や生産効率化に寄与すると考えている。
■今後の展望
SAZMAは、偏光板用途として順次展開中である。偏光子を介して表面保護用基材のSAZMA-Sとゼロ位相差基材SAZMA-Zを貼り合わせや当社の光学補償膜であるSANUQI2) と貼り合わせが最適となる設計を施している(Fig. 4)。上下のフィルムの幅や巻長を長尺で揃えることで貼合時の加工ロスの削減につながり、お客様のさらなる生産性の向上や環境負荷低減に貢献する。今後は、光学的等方性と薄膜化ポテンシャルを生かして、偏光板用途に限らず様々な最先端ディスプレイでの活用が拡大進行中である。
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Fig. 4 Sectional views showing structures of a polarizing plate.