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概要
MIMPSとは、Medical Image Management and Processing Systemsの略称であり、医用画像の管理および処理の自動化により、読影医の作業時間を短縮し、画像診断ワークフローの効率化を実現するシステムである1)。自社のPACS(医療⽤画像保管・転送システム)製品である医用画像管理システム「FINO.VITA.GX」に搭載されている「同期アシスト」は、AI技術を活用したMIMPS(以降、MIMPS-AIと記す)の一例である。現在と過去のCT検査画像の解剖学的位置が自動的に同期表示され、経時的変化の確認が容易になるものである(Fig. 1)。また、医療安全および効率化に関連する技術として「読影レポート解析支援」の技術開発を進めており、読影レポートに記載された平文から、所見・病名・部位などの重要な情報を構造化し、所見内容の効率的な把握と有所見レポートの適切な管理が可能になることを目指している。本報告では、上記2つの機能と特長について紹介する。
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Fig. 1 同期アシストによる画像比較の様子
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詳細
■構成
1. 同期アシスト
CT画像同期アシスト機能は、臓器形状の解析処理と表示処理から構成される。解析処理は、PACSに画像が受信されたタイミングで実行され、CT画像(シリーズ単位)を解析して臓器形状に関する情報(ランドマーク)を抽出する。その後、画像が表示される際には、PACSビューアにおいてこの解析結果を基に表示制御が行われ、効率的な診断を実現する。
2. レポート構造化
レポート構造化は、胸部CT画像レポートに記載された部位、所見、病名、肯定否定判定、数値情報を体系的に整理するプロセスである。この処理は、所見文および診断文を1文単位で解析する。具体的には、形態素解析、文節特定、辞書参照による病名・所見・部位特定、肯定否定判定(有所見判定)を順に行い、構造化情報を抽出する。
■機能/特長/用途
1. 同期アシスト
CT画像からランドマーク位置を認識する機能は、Deep Learningを活用した3次元画像解析技術を用いて特定の解剖学的ポイントを抽出する機能である。これらのランドマーク位置を基準に、アクティブ画像に対して位置合わせを行い、同一位置同士の画像を比較することが可能である。位置合わせ操作はワンクリックで完了するため、迅速かつ効率的な診断を提供できると考えられる。
2. レポート構造化
提案するレポート解析手段は、胸部CT画像レポートの情報を効率的に構造化する機能を提供する。特長として、高い構造化精度に加え、迅速な処理を実現する点が挙げられる。指摘された所見・病名に対する有所見判定精度は97.3%、汎用ノートPCのCPU(Intel Core i5-8250U相当)における、1レポートあたりの処理時間は0.5秒以下を実現している(Table 1)。リアルタイムで解析結果を得ることができるため、実運用での所見内容の効率的な把握と、有所見レポートの適切な管理が期待される。
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Table 1 レポート構造化の例
■今後の展望
対応部位の拡張による同期アシスト機能の強化と、レポート解析手段の精度向上および機能拡充を進めることで、MIMPS-AIを活用した読影業務の多面的な効率化が実現し、医師の業務負担軽減への貢献が期待される。