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メタレンズと屈折レンズを組み合わせたハイブリッド遠赤外撮像システム

KONICA MINOLTA Technol. Rep. 2026, 23, 15

メタレンズと屈折レンズを組み合わせたハイブリッド遠赤外撮像システム Hybrid Infrared Imaging System Combining Metalens and Refractive Lens

  • 岩間 真木* Masaki IWAMA
  • 横山 光** Mitsuru YOKOYAMA

*光学コンポーネント事業部
**技術開発本部 デバイス技術開発センター

1 概要

 遠赤外カメラは、夜間や濃霧・雨天など視認性が低下する環境下においても歩行者を熱源として検出可能であることから、先進運転支援システムへの適用が期待されている。一方、車載遠赤外カメラの光学系は複数枚のゲルマニウムレンズを組み合わせる必要があるため高価かつ大型になりやすく、このことが車載用途における普及の阻害要因となっている。この課題に対する解決策の一つとして、基板表面にマイクロ~ナノスケールの構造を配置することにより光を精密に制御する次世代光学素子であるメタレンズ1)が注目されている。曲面による屈折を利用して光を制御する従来レンズとは異なり、メタレンズは厚さ数マイクロメートル程度の平面素子でありながら、従来レンズと同等あるいはそれ以上の光学性能を発揮し得ると期待されている。本報告では、コニカミノルタのコア技術『光学』と『微細加工』を活用し開発中の、遠赤外カメラの高性能化および低コスト化のためのメタレンズについて紹介する。

2 詳細

■構成

【メタレンズの設計】
 光の波長よりも小さな微細構造の寸法や形状を変えることで、光との相互作用を制御できる。例えば Fig. 1 に示すように、細い柱構造(A)を透過する光は進行が速く、太い柱構造(B)を透過する光は遅く進む。柱の幅が空間的にグラデーションを持つように配置すれば(C)、周辺部と中央部で光の進む速度を変えることができ、透過光が集光するように作用するメタレンズとなる。このように、メタレンズの設計においては、各座標における微細構造の寸法と形状を適切に決定することが重要である。2025年現在、市販のメタレンズ設計ソフトウェアは、微細構造の形状を例えば円柱に限定し、各座標ごとに最適な径を探索することにより性能の改善を図っている。しかし、微細構造の形状に対する制約を取り除き、形状そのものを設計パラメータとして最適化することができれば、より優れた性能のメタレンズが実現し得る。筆者らはコア技術である光学技術を活用し、微細構造形状のパラメータ化機能や高トレランス設計機能を内製ソフトウェアに実装し、メタレンズ設計の高性能化および差別化を実現した。Fig. 2 に、焦点距離 1 mm のメタレンズについて、形状を固定した設計と形状可変(矩形、六角形など7種類の断面形状の混在)かつ高トレランス設計における像面上のビームプロファイルを示す。形状のパラメータ化とトレランスの考慮により、より高い集光性能が得られていることが分かる。

Fig.1 微細構造を透過する光の速度変化とメタレンズによる集光の概念図

写真

Fig.2 メタレンズを透過した光の像面におけるビームプロファイルの比較(形状固定設計vs.形状可変・トレランス考慮設計)

■機能/特長/用途

【メタレンズの作製】
 メタレンズはフォトリソグラフィやエッチングなどの半導体製造プロセスで作製できるため、従来のレンズと比べ量産性とコスト面で優位である。またコニカミノルタはコア技術として微細加工技術を保有しており、メタレンズの試作を社内で一貫して短期間で行うことができる。Fig. 3 に当社で作製した柱状微細構造の走査型電子顕微鏡像を示す。加工条件の最適化により、アスペクト比 1:10 以上の高アスペクト比で、垂直性に優れた微細構造を実現している。この高精度な微細加工技術により、設計どおりの光学機能を示すメタレンズを作製できる。

写真

Fig.3 高アスペクト微細構造の電子顕微鏡画像

■今後の展望

【メタレンズの遠赤外カメラへの適用】
 従来の遠赤外カメラでは、高価であり調達リスクも大きい非球面ゲルマニウムレンズが用いられてきた。これに変わる構成として安価な球面シリコンレンズとメタレンズを組み合わせたハイブリッドメタレンズ光学系を試作し、ゲルマニウムを使用しない高画質光学系の可能性を検討した2)。Fig. 4 に、球面シリコンレンズ単体の場合と、同じレンズにメタレンズを組み合わせ非球面レンズ相当の収差の補正を行った場合の像の比較結果を示す。メタレンズを追加することで、特に周辺視野(図中赤枠)におけるボケが抑制され、コントラストが改善されていることが分かる。今後、車載遠赤外カメラをはじめとする小型化・高精度化・低コスト化が求められる各種アプリケーションに対してメタレンズ技術を展開していくことで、『見えないものの見える化』を通じた安全・安心な社会の実現に貢献していく。

写真

Fig.4 シリコンレンズ単体とハイブリッドメタレンズの像コントラストの比較

●参考文献

1) Yu, N.; Genevet, P.; Kats, M.; Aieta, F.; Tetienne, J.; Capasso, F.; Gaburro, Z. Light Propagation with Phase Discontinuities: Generalized Laws of Reflection and Refraction. Science 2011, 334, 333–337.
2) Iwama, M.; Yokoyama, M.; Yamaguchi, S. メタサーフェスによる赤外線センサ光学系の収差改善および低コスト化の検討. 日本赤外線学会第33回研究発表会予稿集 2024.

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