お問い合わせはこちら

協業や技術に関して
お話しましょう

巻頭言

巻頭言

コニカミノルタの技術で実現するサステナブルな未来 A Sustainable Future Realized with Konica Minolta Technologies

大幸 利充

コニカミノルタ株式会社 代表取締役社長

大幸 利充

Toshimitsu Taiko

Director, President & CEO,
Representative Executive Officer
Konica Minolta, Inc.

中期経営計画と技術

当社は2023年度より、新たな中期経営計画を開始いたしました。この中期経営計画期間では「事業の選択と集中」を着実に進め、2025年度以降に向けて成長基盤の確立を目指します。特に「強化事業」として位置づけたインダストリー事業、プロフェッショナルプリント事業、メディカルイメージング事業については、グループの成長ドライバーとして、技術資産を最大限に活用し、お客様に密接したビジネス創出が可能であると考えています。これまで当社は150年の歩みの中で、祖業であるカメラ・フィルム事業から脈々と受け継いできた4つのコア技術(材料、光学、微細加工、画像)を磨き上げ、それらの技術を融合することで、オフィス市場やデジタル印刷市場、液晶ディスプレイ市場、光源色・物体色計測市場などで新たな事業を創出し、事業規模を拡大してきました(Fig. 1)。そして今、創業150年を超えて、当社の技術を更に進化させることで、サステナブルな未来社会に貢献する新たなコニカミノルタへの一歩を踏み出しています。

Fig. 14つのコア技術による事業拡大

 

長期技術開発への投資

今回の中期経営計画では、確かな成長基盤を確立することに注力しますが、それと同時にメーカーとしての当社は、常にその先の未来に対する投資を絶やさず、急速に変化し続ける社会の潮流を読みながら、価値を提供し続ける企業であり続けなければなりません。当社は、強化事業に挙げたメディカル領域やインダストリー領域などにおいても、今後10年以上先の未来で様相が激変することも大いにあり得ると考えています。実際、直近では生成AIのような破壊的な技術が仕事のやり方や業務プロセスに大きな変革をもたらしており、これまでの常識があっという間に覆され、新しい働き方やルールが形成される時代の中にいることを実感しています。このような社会変化の中で、例えばインダストリーのものづくりプロセスにおいても、石油由来原料と化学プラントに代わって、天然由来原料から微生物が我々の身の回りの素材を合成している未来が近づいています。さらにはそのようなものづくりが宇宙で行われている未来もあるかもしれません。このような未来に向かって、当社は有効な投資を行い、歩みを止めることなく一歩一歩着実に、技術の進化と先端技術の導入を進めてまいります。一例として当社は昨年度より、産業技術総合研究所の連携研究ラボを立ち上げ、先に述べたような微生物による材料合成と当社の光学技術をかけ合わせたソリューションについての研究開発を行っています。このように外部機関とも密接に連携し、イノベーションを加速していきます。

 

コニカミノルタの技術で実現したい未来

当社は2030年の社会課題をいろいろな角度から想定し、その中から「5つのマテリアリティ(重要課題)」(Fig. 2)を定めました(1. 働きがい向上および企業活性化、2. 健康で質の高い生活の実現、3. 社会における安全・安心確保、4. 気候変動への対応、5. 有限な資源の有効利用)。当社の長期を見据えた技術戦略はこれらのテーマに関連するものとなっています。特に地球規模で起こっている異常な気候変動への対応や有限な資源の有効利用については、当社がこれまで培ってきた技術で貢献できることがたくさんあると考えており、上述の連携研究ラボへの投資もその一例です。他にも例えば、繊維の染色時に生じる工業用水汚染が課題となっているアパレル産業においては、当社は廃水のない染色を実現するインクジェット染色技術を開発しています。この技術によってプリント後の水洗工程を省略できる印刷システムを実現し、環境負荷の低減に寄与できるものと考えています。また、当社のインクジェット印刷技術は、狙った場所に液滴を着弾させることができる強みがあり、これは必要な部分だけに必要な材料を塗布できますので、不要な部分に材料を塗る無駄や洗浄工程での廃棄ロス削減につながり、電子回路基板製造など様々な工業用途で広く環境負荷低減に貢献することを目指しています。これを実現するためのインクジェット技術は、当社の様々なコア技術によって支えられています。その一つとして、インクを狙ったところに正確に打ち込むためのインクジェットヘッドは精緻なノズル形状の形成技術が重要であり、当社が持つ微細加工技術が活かされています。そして、この微細加工技術はインクジェットヘッドだけでなく、様々な事業で応用されています。メディカルイメージング事業においては微細加工技術を活かした次世代の超音波トランスデューサを開発しており、これが実現すれば超音波診断装置の感度が飛躍的に向上し、これまで超音波診断装置では見ることができなかった早期の癌を発見できることが期待できます。このように一つのコア技術を複数の事業に横展開することで、投資によって生み出される価値を最大化し、新たな環境課題への価値提供も可能になると考えて長期視点での研究開発投資を判断していきます。

Fig. 2 2030年の社会課題から特定した5つのマテリアリティ(重要課題)

 

本年度のテクノロジーレポートについて

本年度のテクノロジーレポートにおいても上述の微細加工技術や環境への取組みを報告しています。例えば、当社の主力製品である複合機において、トナーを本体に送り込むためのトナーボトルの材料の一部には、廃棄された飲料用のミルクボトルを回収し、再生利用しています。レポートの中では、回収したミルクボトルから得られた再生材の品質に依存しないトナーボトル生産技術について述べられています。また、複合機に関する別の環境負荷低減施策として、外装材には2012年から自社開発の再生樹脂を採用しており、マテリアルリサイクルとCO2排出量の抑制において業界をリードしてきました。材料設計技術や計測機器、さらにはデータサイエンスまでを融合し、環境性能と機能性を高めた再生樹脂を開発し、外装材として採用することに成功しています。その他、4つのコア技術に関するレポートに加え、コア技術にAIをかけ合わせることでコア技術を進化させ「様々な事業領域で人々の安全・安心・働きがい向上を実現」するためのAI技術として開発を進めるFORXAIに関するレポートや、データサイエンスに関するものまで、本号では当社のコア技術の強みと、それをどのように事業に応用しているかをご紹介させていただきます。

 

最後に

当社グループは2003年の経営統合以来、サステナビリティ(持続可能性)を経営の中核に位置づけてきました。厳しい事業環境下にあって、足元では業績の回復が急務ではありますが、「5つのマテリアリティ」を軸として、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで中長期的な企業価値向上を目指していく、という経営方針に変わりなく、サステナブルな未来に向けた大切な実現手段である技術の進化を進めてまいります。

 

このページを共有する

このページを印刷する