1 概要
コニカミノルタは、20年以上にわたり繊維染色業界においてインクジェットテキスタイルプリンター「Nassenger(ナッセンジャー)」シリーズを通じ、アナログ捺染からデジタル捺染への変革に貢献してきた。デジタル捺染では、染料の定着を促進するため、印刷前に布帛へ前処理液を塗布する「前処理工程」が必要となり、これが製造プロセス増大の要因の一つとなっている。コニカミノルタは前処理工程の削減に着目し、インクジェットで吐出可能なインライン前処理インクの開発を進め、2025年7月に反応染料用インライン前処理インク「O‘ROBE(オーローブ)」(以下、本製品)を発売した。本製品の使用により、前処理工程を印刷工程に統合することが可能となり、エネルギー消費量の大幅な削減のほか、従来必要であった前処理済み布帛の在庫管理が不要となる。これにより、環境負荷の軽減や顧客の作業効率の向上に大きく貢献できる(Fig. 1)。
Fig. 1 デジタル捺染の工程フロー
2 詳細
■構成
本製品はテキスタイル向け反応染料用前処理インクとして、「Nassenger」シリーズに搭載可能であり、前処理工程と印刷工程の統合を実現する機能性インクである。デジタル捺染において前処理は不可欠な要素であり、布帛に前処理を施さない場合、染料は布帛に定着せず、プリント品質の低下を招く(Fig. 2)。本製品は、従来の前処理液に求められる機能を保持しつつ、インクジェットで吐出可能なインクとして設計されている。
Fig. 2 前処理の役割
■機能/特長/用途
次に、本製品において重要となる前処理液のインクジェット化技術について紹介する。
高濃度化とヘッド耐久性の両立
前処理液には、染料の定着を促進するためアルカリ剤を含むことが一般的である。しかし、インクジェット方式による前処理インクの塗布量は従来のパディング方式に比べて少ないため、アルカリ剤の濃度を高める必要がある。一方で、アルカリ剤はインクジェットヘッドの故障要因の一つであり、単純な高濃度化はヘッド耐久性の観点から困難であった。そこで本製品では、適用するアルカリ剤を最適化することで、高濃度化とヘッド耐久性の両立を実現した(Fig. 3)。
Fig. 3 アルカリ剤最適化前後でのインクジェットヘッドにおける各ノズルの状態
インク保存性向上
通常、インクジェットインクは製造から1~2年の保存期間を有するが、アルカリ条件下で保湿剤を含むインクはインク中で保湿剤が分解してしまう可能性がある。このため、保湿剤を含む前処理インクの性能が低下してしまい、十分な保存期間を確保することが困難であった。そこで本製品では、インク中での保湿剤の分解を防止する技術を開発し、十分な保存期間を確保することに成功した(Fig. 4)。これら技術を組み合わせることで、国内初となる反応染料用インライン前処理インク「O’ROBE」の上市を実現した。
Fig. 4 2年経過後の前処理インク性能
■今後の展望
コニカミノルタは、20年以上にわたりデジタル捺染事業を展開し、様々なインク製品を開発してきた。本製品は、環境負荷の軽減および顧客の作業効率の向上に資する画期的な製品として、2025年7月に発売された。今後も、顧客ニーズに応えるインク製品の開発を通じて、デジタル捺染の新たな可能性を切り拓いていく。