巻頭言
巻頭言
技術基盤の確立と持続的成長に向けた一歩 The Steps for Establishing Technological Foundation and Sustainable Growth
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コニカミノルタ株式会社
執行役員 技術開発本部長
岸 恵一
Keiichi Kishi
Corporate Vice President
General Manager, Corporate Technology Development Headquarters
中期経営計画での技術開発の進捗
当社は2023年度より、新たな中期経営計画を開始しており、今年度は2年目という重要な年となっています。現在の中期経営計画では、「強化事業を拡大する為の技術開発の強化」と、「将来成長のための技術の仕込み」の2点が重要な要素となっています。特に将来成長のための技術の仕込みにおいては、当社がメーカーとして行ってきたものづくり技術をどのように進化させていき次世代のものづくりに貢献していくかに焦点を定め開発を進めてきました。例えば、次世代のものづくりと言われ、世界中にて研究開発が進んでいる、生物の力を活用する「バイオものづくり」への取り組みもその一つです。
次世代ものづくりとしての“バイオものづくり”
「バイオものづくり」の分野では、産業技術総合研究所と共同で「バイオプロセス技術連携研究ラボ」を設立しました。このラボでは、微生物の培養と分離、精製など一連の先端バイオ技術を研究・開発しており、当社のものづくりの経験、技術を発展、応用することで、バイオものづくりでの課題解決を目指しております。非化石由来の原料から材料を合成する、バイオものづくりの分野でも、コニカミノルタが保有する高度な計測技術やシステム構築技術を活用し、スケールアップ、安定生産が可能になります。例えば当社の、センシング技術とAIを活用する事で、量産に適した化学物質を生成できる細胞「スマートセル」の判別や、培養条件の最適化が実現でき、バイオものづくりの安定化とコストダウンに寄与できます。
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技術融合による成長への仕込み
また、他にもコニカミノルタでは今後の成長領域に対して技術の仕込みを継続しています。150年の歴史の中で培ってきた「材料」「画像」「光学」「微細加工」技術を融合し、さらにAIといった最新技術などをかけ合わせる事で優位性の高い技術を生み出し続けています。例えば、独自のセンシング技術である、相互作用蛍光検出システム“FLAIRS”は、複数の色素分子と分析物の相互作用により発生する複雑な光のパターン変化を独自のAIを用いて解析する事で物質の状態・性質などを判別・予測します。かけ合わせは最新技術だけではありません。自然界の構造と当社の技術をかけ合わせる事でも新しい技術を生み出しています。蓮の葉の表面構造を参考に、見えない凹凸構造を削り出し超撥水を実現する技術なども成長領域への技術の仕込みになります。
本年度のテクノロジーレポートについて
本年度のテクノロジーレポートにおいても上述のFLAIRSやバイオものづくりの生産性向上に寄与する微生物の画像解析技術について報告しています。その他、各事業領域にてAIをどのようにかけ合わせているかの事例を紹介しています。例えば、ヘルスケア領域における胸部X線画像等の診断や樹脂成型加工分野でのAI応用などをレポートしています。更には、インクジェット、センシングや光学フィルムに関する技術紹介など、本号では当社の基盤となる技術から持続的成長に向けた技術までをご紹介させていただきます。
最後に
中期経営計画の2年目という今年度は「将来成長のための技術の仕込み」が進んできた1年でした。これらの技術はまだ、種を撒いて、やっと新しい芽が出てきた状態です。この芽をしっかりと育て社会に貢献し、事業として成長させる事こそが、技術の仕込みでありますので引き続きしっかりと進めてまいります。