1 概要
超音波診断装置は、非侵襲かつリアルタイムでの観察が可能であることから様々な診療科で使用されている。整形外科領域における活用の一つに、手根管症候群や肘部管症候群などの疾患に対する手術適応の判定があり、神経の断面積が判定指標の一つとして用いられている1)。従来、超音波診断装置における神経断面積の計測は、医師が手動で神経領域の輪郭をトレースする必要があり、時間と労力を要していた。この課題に対し、我々はAI(Artificial Intelligence)を活用して超音波画像から神経領域を認識し、神経の断面積計測をセミオートでアシストする「神経断面積計測」機能を開発し、超音波診断装置SONIMAGE UX1に搭載した。本機能により操作の省力化を実現し、医師の検査ワークフローの改善に貢献する。
2 詳細
■構成
本機能は、超音波画像から神経領域を同定し、その断面積をセミオート計測する一連の処理で構成される。システムはAIによる神経領域の検出、計測対象神経の選択、計測値の算出という処理フローで動作する。(Fig. 1)
Fig. 1 本機能のシステム概要図
■機能/特長/用途
本機能の主要な特長は、神経領域の自動認識と断面積のセミオート計測である。手根管症候群における正中神経の評価など、神経断面積の定量的評価が求められる診断場面での活用が想定される。従来の手動トレースでは、医師が神経領域の輪郭をなぞるように線を引く必要があり、計測作業に時間を要していた(Fig. 2a)。また、神経領域の輪郭を修正する場合は、再度手動トレース操作を行う必要があった。
これに対し、本機能では画像を静止した後に計測ボタンを押下するだけで、AIが神経領域を認識し、断面積が算出される(Fig. 2b)。
Fig.2 神経断面積の計測における a)従来の手動トレースの操作フロー図と b)本機能を用いた操作フロー図
これに対し、本機能では画像を静止した後に計測ボタンを押下するだけで、AIが神経領域を認識し、断面積が算出される(Fig. 2b)。計測結果として画面上に神経領域の輪郭と断面積の数値が表示され、医師はその結果を確認できる(Fig. 3)。計測結果が適切であることを確認したうえで、必要に応じて画面上に配置された制御点(Fig.3 右図の十字点)をタッチ操作で動かすことで簡便に輪郭を微調整できる。制御点の間隔は指の幅よりも広くなるように設計しており、タッチ操作にストレスを生じにくいよう工夫している。
Fig.3 自動計測された神経領域の輪郭(緑点線)と断面積の数値(赤枠内)の表示例
このように、本機能では完全自動ではなく医師による調整時の操作性も考慮したセミオート方式による計測方法とすることで、計測作業の時間短縮と省力化を実現している。また、AIにより複数の神経領域が検出された場合、医師が断面積計測時に選択する神経領域の基準に基づき、最も適切な領域を自動で選択する。これにより、プローブ操作を通じて医師が注目したい対象を効率的に計測できる。
■今後の展望
本機能は、AIによる神経認識技術を臨床現場で実用的な計測ツールとして具現化したものである。診断内容の定量化という医療現場のニーズに応え、検査業務の効率化に貢献する。今後の展開として、現在は画像を静止してからの使用に限定されている機能を、検査中にリアルタイムでも適用できるようにすることが挙げられる。我々は今後も、医師の業務負担軽減に資する有用な機能の開発を通じて、超音波診断装置のさらなる進化を目指していく。