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動態撮影機能付き回診車:AeroDR TX m01の開発

動態撮影機能付き回診車:AeroDR TX m01
の開発

Mobile X-ray with dynamic imaging:development of AeroDR TX m01

  • 芳村 隆幸* Takayuki YOSHIMURA
  • 齋藤 剛* Takeshi SAITO
  • 生方 兼六** Kenroku UBUKATA
  • 磯貝 幸平** Kohei ISOGAI

* ヘルスケア事業本部 モダリティ事業部 ** ヘルスケア事業本部 品質保証統括部

要旨

 コニカミノルタでは2018年に、一般X線撮影装置で動画を撮影できるDDRシステムの発売を開始、また、撮影したX線動画を独自の画像処理技術で診断精度向上に活用する、X線動画解析ワークステーション「KINOSIS(キノシス)」も発売、動態画像に対し肺機能の可視化や定量化を実現してきた。しかしながら、この装置は、一般X線撮影装置に限定された運用にとどまっており、回診車での運用には未対応であった。

 一方、現在では感染症予防対策のための隔離病棟や集中治療室(以下ICU)に入院している重症患者の診断および病態管理を目的として、回診車の重要性が再認識されている。本来、重症患者の診断および病態管理を行うには、CTなどの高度な検査が必要だが、多数の生命維持装置が接続された患者を検査室等へ移送することは非常に困難である。そのため、既存の回診車の検査等による限られた診断情報のみで診断および病態管理せざるを得ないのが現状である。

 この現状を打破すべく、患者移送なしにベッドサイドでのX線無線動画(シリアル)撮影を可能とし、より多くの情報を提供し得る、回診用X線撮影装置「AeroDR TX m01(エアロディーアール ティーエックス エムゼロワン)」(*1)(製造販売認証番号:第303ABBZX00055000号)を開発したので紹介する。

 

*1 「AeroDR TX m01」は販売名「移動型汎用X線装置 AeroDR TX m01」の呼称です

Abstract

 Konica Minolta launched Dynamic Digital Radiography (DDR) system which is a series of individual digital images acquired with general X-ray systems in 2018, and launched “KINOSIS” workstation which can improve diagnostic accuracy with our unique image processing algorithm. These systems have enabled visualization and quantification of lung function on DDR images.  

 However, this is only for a general radiography system (radiography system operating at X-ray room), so it is not yet compatible for mobile X-ray.

 On the other hand, the importance of mobile X-ray has been reaffirmed for the purpose of diagnosis/condition management of a patient with a serious illness who has been hospitalized on isolation wards or intensive care units (ICUs).

 In general, CT or advanced examinations are necessary to diagnose and manage the condition of a patient with a serious illness, but it is extremely difficult to move them to CT laboratory, etc. because of having a lot of life-support device. Currently, He has no choice but to diagnose and manage the condition with limited diagnostic information from the existing mobile X-ray.

 To overcome this situation, we have developed the mobile X-ray “AeroDR TX m01″(*1) which can take DDR image with wireless connection at the bedside without patient transport and provide a lot of information to doctors.

*1 AeroDR TX m01″ is a designation for “AeroDR TX m01 mobile X-ray system.

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はじめに

 近年、COVID19等の感染症が流行し、その対策のため隔離病棟での病態管理や、ICUに入院している重症患者の診断および病態管理を目的として回診車の重要性が再認識されている。

 通常病棟での診断や病態管理では、患者をCTやMRI、X線の検査室等に移送し検査を行い、多くの情報を取得する。しかしながら、隔離病棟やICUに入院されている患者は感染防止対策や多くの生命維持装置等が接続された状態であり、患者の移送は容易では無い。そのため、患者の移送不要な限られた検査(回診車による単純X線撮影やポータブル医療機器の使用等)に頼らざるを得ないが、多くの情報を得られる検査とはなっていない。

 コニカミノルタでは、当社独自のデジタルX線動画撮影システムを回診車に搭載することで、患者の移送なしにベッドサイドでX線無線動画撮影を可能とすることで、より多くの情報を提供することが重要と考えた。

 これより、回診車の機動性と動画撮影による多くの情報取得の2つの利点を併せ持つ、回診用X線撮影装置「AeroDR TX m01」の開発に着手した。

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商品紹介

2. 1 概要

 本商品では、動画撮影が可能となるX線装置を回診車(Fig.1)に搭載、更にデジタルX線動画撮影が可能な当社ワイヤレスカセッテ型FPD「AeroDR fine motion」(Fig. 2)(以下:パネル)を組み合わせることで、回診車による動画撮影を可能としている。なお、これらを単純に組み合わせるだけでなく、操作者の利便性や簡便性を念頭に様々な追加機能を搭載、機動性と多くの情報を効率的に提供できる商品となっており、以下で代表機能例を紹介する。

Fig. 1 AeroDR TX m01

Fig.2 Wireless portable DR “AeroDR Fine motion

2. 2 無線動画(シリアル)撮影機能

 従来の一般撮影室での動画撮影では回診車とパネルを有線ケーブルで接続することにより、X線曝射とパネルの画像蓄積の同期遅延を防止している。一方、ICUにおいては人工呼吸器をはじめとする多くの生命維持装置等が装着されていることが多く、回診車を用いた検査においては動線の確保が必要不可欠である。そこで「AeroDR TX m01」では、回診車とパネルを無線接続することで動線の確保が可能なシステム構成とした(Fig. 3)。なお、無線接続においては、ネットワーク遅延等によるX線曝射と画像蓄積の同期遅延が課題となったが、有線ケーブル接続と同等の精度で同期可能な無線接続技術を新規開発し解決、無線でありながら同期遅延なく動画撮影が可能となった。

Fig. 3 Wireless connection between AeroDR TX m01 and Wireless portable DR “AeroDR Fine motion”

2. 3 アライメントサポート機能

 回診撮影においては、患者の日々の容態変化を捉えるためにX線画像を経時的に観察する。この場合、撮影時の患者の姿勢やX線の入射角など、撮影条件が一定であることが望ましい。本商品では、X線管とパネルそれぞれに加速度センサを搭載し、ロール角とピッチ角をモニター表示する機能を実現した。また、X線の斜入によるグリッドのカットオフ影響を低減するため、X線管とパネルのピッチ角が一致すると色付き(緑色)で表示、直感的に2つの角度の整合を確認することが可能となり、ポジショニング時のアライメント調整もサポートしている。

Fig. 4 Alignment support function

2. 4 パネル充電機能を備えたキャビネット

 無線動画撮影では通常の撮影と比べてパネルの消費電力が大きく、パネル内蔵バッテリー―の残量不足を防ぐためには適度な充電が必要である。本来は専用の充電ユニットで充電を行うが、充電の度に充電ユニットの設置場所に移動するのでは作業効率を低下させてしまう。そこで、パネルを格納するだけで回診車内蔵のバッテリーにつながっているコネクタとパネルの給電用コネクタが的確に嵌合してパネルを充電できるキャビネットを設けた。このキャビネットにはパネルが格納され充電が開始されると通知音を発する機能を設けユーザビリティにも配慮している。

 また、回診車の幅はわずか540mmと非常にコンパクトでありながら、動画撮影パネルを含めた異なるサイズのパネルを合計3枚格納できるよう、キャビネットを本体前方と後方に設けている。(Fig. 5)

 これにより、移動中に動画撮影パネルの充電ができ、充電不足を気にすることなく撮影に適した複数サイズの動画撮影パネルを格納して持ち運べることで、より効率的なワークフローを実現した。

Fig. 5 The Front Cabinet (L) can store two panels of 1417 size or 1717 size and 1012 size. Also, the Back Cabinet (R) can store panels of three different sizes: 1417, 1717, and 1012. Both Cabinets have the function of charging the panel, and the Back Cabinet has the function of communicating with the panel.

2. 5 更なる利便性の向上

 回診撮影においては、撮影後その場で再撮影の要否判断が必要であり、さらに撮影時の各種設定や撮影後の画像調整なども手元のモニターで行う必要があるため、モニターには高い視認性と操作性が要求される。また、ベッドサイド等の限られたスペースで撮影を行うが、操作者の被曝線量低減の観点より、X線源から十分な距離を確保しつつ曝射スイッチの操作が必要となる。

 そこで、メインモニター(Fig. 6)には大型19インチのタッチパネルタイプを採用することで離れた場所からでも画像や各種情報を視認できるようになり、また、動画撮影中においてポジショニング等を確認できるよう動画像を表示する機能を搭載した。なお、X線管球操作部となるセカンドモニター(Fig. 7)にも8.2インチのタッチパネルタイプを採用し、撮影条件の確認や変更をセカンドモニター上で実現、さらに撮影全般の操作もこのモニター上で完結可能とした。また、赤外線リモコン方式の曝射スイッチ(Fig. 8)を搭載し、スペースにとらわれず十分な距離を確保しつつ曝射スイッチ操作を可能にするなど、回診撮影における特有な環境条件にも配慮し、利便性を更に向上させた。

Fig. 6 19inch main monitor

Fig. 7 8.2inch Second monito

Fig. 8 IR Wireless switch

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回診車に於ける動態X線撮影実現の効果

 本商品で撮影した動画からより多くの診断情報を抽出することを目的として、当社X線動画解析ワークステーション「KINOSIS」で画像解析処理を行う。KINOSISでは、肺野内の構造物の動きや、心拍に同期した肺野内の血流変化量などの可視化、定量化など様々な解析が可能である(Fig. 9, 10)。臨床現場において、ICUなどのベッドサイド撮影を行い、静止画では分からなかった患者の呼吸に伴う肺野や横隔膜の動きを捉えることや、治療前後での肺の換気状態の変化を比較することが可能となった。動画撮影可能な回診車を通してより多くの診断情報を提供することで、診断レベルの向上や適切な治療、重症化予防への貢献が期待できる。

Fig. 9 [sample image] FE-MODE (L):Edge-enhanced image of pulmonary tissue, LM-MODE (R):Summary image showing areas of reduced motion within the lung field

Fig. 10 [sample image] PH2-MODE : Visualization of the amount of signal change in pulmonary area synchronized with the heartbeat

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まとめ(今後の展望)

 今回,回診車と動画撮影パネルを組み合わせ、回診用X線撮影装置「AeroDR TX m01」を開発した。回診車による動画撮影の提供を可能としただけでなく、パネル無線接続、アライメントサポート機能、パネル充電機能付きキャビネット、大型モニターなどを搭載し、回診撮影環境における操作者の利便性や簡便性の向上に寄与した。これにより、今まで実現できなかった隔離病棟やICUでの病態管理に於いて多くの診断情報を容易に提供することが可能となり、診断能の向上に貢献できると考えている。

 今後、国内外の協力施設において臨床研究を進め、生体機能の見える化の実現に向けて挑戦してゆくと共に、AI技術も活用しながら当社独自の画像解析技術を継続的に開発することでより効率的な診療を実現し、更なる医療の質の向上に貢献していく所存である。

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