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概要
コニカミノルタは「高速デジタルカラー複合機8050」を2003年に発売以来、電子写真技術を用いたプロダクションプリンターを開発、展開してきた。オンデマンド印刷現場では、正確で安定した色再現を持ち、扱いが容易な印刷機が重要である。我々は印刷用紙上にカラーパッチを描画してインラインのカラーセンサーで測定し、目標の色調に制御、維持する出力紙濃度調整機能を開発した。またIQ-501を用いて印刷用紙上の極小パッチにより印刷処理中の色変動を検出し、後述の色彩補正をリアルタイムで行う自動画質補正を開発、商業印刷向けの高速機(Heavy Production Print:HPP)から中低速機(MPP, LPP)の各機種に搭載、より「扱いやすい高品質」を目指し、技術、製品開発を続けている。本書では、最新機種AccurioPress C14010/12010とIQ-601に搭載した新しい色彩補正技術(インテリジェントカラーコントロール)の紹介を行う。
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詳細
■構成
カラー印刷の品質維持には、①色の濃淡(階調)を目標の特性に揃える、②印刷中の色変動を抑える、の2視点が重要である。出力紙濃度調整は、①用紙上で基本色(YMCK4色)を所定の階調特性に整える「出力紙ガンマ調整」と、本書で説明する②出力紙ガンマ調整後の色調を維持する「色彩補正」の二機能を持つ。カラー電子写真は単色を重ねて混色を再現するが、重ねた色同士の相互作用で複雑な色変化が現れるから、色彩補正は混色も対象とする必要がある。そこで従来は基本色4色に加え、二層の混色であるRGBの3色と、三層の混色であるグレー(プロセスブラック)1色の、計8個の色要素に対し、各々濃淡の調整を行うアルゴリズムで高速処理を実現していた。
■機能/特長/用途
一方混色には濃淡以外にも色相方向の変化等、様々な変動要素があり、調整の自由度が不足する課題があった。そこで濃淡の調整要素を従来の8個から、重ね合わせの相互作用も含めた13個に増やすことで、色変化に柔軟に対応することを考えた。また、色変化を詳細に捉えるには頻繁に測定を行い、都度検知する必要があるから、調整チャートの枚数や大きさを最低限に抑える必要がある。Fig. 1に調整チャートの構成を示す。a) は出力紙ガンマ調整用で基本色のパッチが複数描画される。b) は色彩補正用で、基本色と混色の構成である。c) は自動画質補正用で、基本色(左)と混色(右)の2構成を印刷用紙の断裁シロに描画する。各デザインの□部は特色(白)測定用の余白である。
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Fig. 1 Diagrams of color chart images.
これらのパッチで解析できる色数はカラー印刷で表現できる色全体(色空間)の内、ごく一部なので、描画されたパッチ色の変化と色空間上のパッチ色の位置(分布)関係から、色空間全体の色変化の方向を推測して補正値を算出し、補正頻度と効果の両方を狙うアルゴリズムを採用、ASIC回路で処理することで高速印刷を実現した。Fig. 2は従来方式の課題である色相方向を主とする色変動ノイズを与えた試験機に対して色彩補正を行い、補正前後の色差(縦軸:相対値)を比較した結果である。単色で効果の高い従来方式a) と比較し、新方式b) では、混色でも単色同様に色差が軽減(約0.36倍)していることがわかる。
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Fig. 2 Comparison of color correction effects.
■今後の展望
以上、新たな色彩補正について紹介した。コニカミノルタは今後も現場を観察して知見を高め、必要な技術開発を行い、オンデマンド印刷を通じて彩り豊かな社会に向け貢献していく予定である。