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イメージング分光測色計による新たな価値の提供

イメージング分光測色計による
新たな価値の提供

Providing New Value with Imaging Spectrophotometer

  • 田中 宏樹* Hiroki TANAKA
  • 柴田 洋輝** Hiroki SHIBATA
  • 山本 信次* Shinji YAMAMOTO

* センシング事業本部 LD&CA 事業部  ** センシング事業本部 ADS 事業部

要旨

 近年、スマートフォンなどの小型 IT 機器を中心に微小面の色管理のニーズが増えているが、既存の測色計では測できない、あるいは測定に多くの手間が掛かるという課題があったコニカミノルタは、これらの課題を解決するためにイメージング分光測色計 HSI1d 開発したまず二次元で広い範囲のデータを取得して、所望の領域を指定してデータを出力することで、位置合わせの手間を無くすとともに、複数点を同時に測定することが可能になり、微小面の色管理の手間を飛躍的に改善することができる。
 商品
においては、2020 12 コニカミノルタのグループ会社に加わった SPECIM 社のハイパースペクトルカメラと、コニカミノルタが保有する安定照明技術、校正・補正技術を組み合わせることで、効率的に短期間で品化を実現した。
 今後
アプリケーションソフトウェアなどの改善により微小面色管理の効率をさらに改善するとともに、さらには、二次元で高精度な色測定が可能なイメージング分光測色計を用いることにより従来では実現できなかった顧客の課題を解決する新しいソリューションの提供につなげていきたい。

Abstract

 In recent years, there has been an increasing need for color management of small areas such as parts of
smartphones. However, there are cases in which existing spectrophotometers cannot measure such small parts, or the measurement needs a lot of time and effort. Konica Minolta has developed the Imaging Spectrophotometer HSI-1d to solve these problems. In use, it first acquires two-dimensional data over a wide range, and users can then specify the desired area and output the data. This method reduces the time for alignment and enables measurement of a plurality of points at once, thereby dramatically reducing the time for color management of small areas.
 For efficient and rapid development, we combined the hyperspectral camera of SPECIM, which joined the Konica Minolta group in December 2020, with Konica Minolta’s stable lighting technology and calibration and correction technology.
 In the future, we would like to further improve the efficiency of color management for small areas by
improving the application software, etc.. Furthermore, by using an imaging spectrophotometer capable of high-precision two-dimensional color measurement, we hope to provide new solutions to customer
problems that could not be realized in the past.

1

はじめに

 近年、スマートフォンなどの小型 IT 機器を中心に微小面の色管理のニーズが増えているが、既存の測色計では測できない、あるいは測定に多くの手間が掛かるという課題があったFig. 1

(a) Traditional measurement method. Accurately align the sample with the spectrophotometer and measure one point at a time.

(b) Measurement method using an imaging spectrophotometer. Capture a hyper spectral image and calculate the color values of multiple desired areas at once.

Fig. 1 Comparison of small area color measurement method.

 従来は、測定サンプル保持用のトレーを測定サンプル毎に作成し測定の際には三軸ステージなどを用いて位置合わせを行う必要があり、前準備と測定作業に多くの時間を要していたそれに対して、イメージング分光測色計を用いることでまず二次元で広い範囲のデータを取得して、所望の領域を指定してデータを出力することが可能になり正確な位置合わせの手間を無くすとともに、複数点を同時に測定することが可能になり、微小面の色測定の手間を飛躍的に改善することができる
 こうして、
二次元で測色が可能になることでより微細な領域を測定したい領域指定をより簡単に行いたいどの新たな要望も生まれる。これらに対して実際の顧客ワークフローに適した改善を進めていくためには、ユーザーも巻き込んだソリューション開発が必要と考え、SPECIM ハイパースペクトルイメージング(以下、HSI と略記する)技術を用いてハードウェア開発を行うことで効率的に短期間でイメージング分光測色計 HSI1dFig. 2
の商品化
を行った

Fig. 2 Imaging spectrophotometer HSI-1d

2

SPECIM社が保有するHSI技術

2. 1 SPECIM 社の概要

 SPECIM 社はフィンランド・オウル市を本拠に 1995 年に創業した、HSI 技術のリーディングカンパニーである。
 HSI の黎明期より技術をリードし、各種研究機関と連携して HSI 用途を開拓、普及し、事業として立ち上げてきた。近年では、“SPECTRAL IMAGING MADE EASY のスローガンの元、これまで研究用途メインだった HSI を、各種インダストリー用途に展開すべく、各種装置への組み込みが容易な HSI デバイスの開発、販売に注力している。
 2020 12 月にコニカミノルタのグループ会社となり、販売面、技術面での展開強化を加速させている。

2. 2 SPECIM社のHSI技術

 SPECIM 社のHSI は、プッシュブルームラインスキャン方式を採用している。スリットを通過した線状イメージを分光し、二次元センサで位置情報×分光データとして取得するFig. 3さらに、カメラ若しくは被写体を動かすことで二次元分光データを取得することができるプッシュブルーム方式は、フィルタ方式に比べるとより高速に測定できる傾向がある。
 SPECIM
社のハイパースペクトルカメラは、可視光から遠赤外領域まで、幅広い波長域に対応するラインナップで、R&D インダストリーの幅広い用途で活用されている。特に、産業向けのインライン検査装置への接続組み込みを容易にし、黒色プラスチックの弁別をも可能にした SPECIM FX シリーズや、撮像、分類、表示が AllinOne パッケージで可能な SPECIM IQ など、顧客の課題解決に寄り添った製品展開が特徴である。

Fig. 3 Spectroscopic optics image of SPECIM’s hyperspectral camera.

2. 3 SPECIM IQ

 SPECIM IQFig.4は前述のとおり、分光データの取得から、分類モデルの適用、評価結果の表示まで、一つの筐体内で完結できる、持ち運びに適したハイパースペクトルカメラである。SPECIM 独自の光学系を用いて、小型軽量なデバイスでのイメージング分光を実現している。加えて、内部光学系の動作により対象物をスキャンするので、被写体の移動を必要とせずに、二次元分光測定が可能であることからHSI1d への組み込みに適したモデルと言える。

Fig. 4 SPECIM IQ

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測色計を実現するための技術

3. 1  システム構成

 ハードウェアの内部構成 Fig. 5 の通りである照明および受光の幾何学条件は、CIE No.15(2004)に準拠した拡散照明/8° 方向受光を採用している。光源からの光を積分球の内壁面で拡散反射させ、試料に対してあらゆる方向から均等に光を照射し、試料からの反射光のうち試料面法線に対して 8°方向に反射する光を受光・分光して、分光反射率及び色彩値を求める
 HSI
1d の受光・分光機能は SPECIM IQ実現しており、照明機能は、コニカミノルタ設計している。
 また、プレビューカメラを内蔵することで、リアルタイムに測定位置をプレビューすることが可能になり、
プレビュー画像を見ながら測定試料の位置合わせができる。
 さらに
正確に測色を行うためには、高精度なハードウェアに加えて絶対値性能を確保するための校正や、誤差要因をキャンセルするための補正も重要な技術である。この校正補正 PC ソフトで行っている。

Fig. 5 Internal structure of HSI-1d

3. 2  照明光学系

 照明光学系は、試料を均一に照明するための積分球と、高い発光安定性とブロードな波長特性を持つ白色 LED を組み合わせており、加えて光量変動補償を行うことで、イメージング分光に求められる照明の精度と信頼性を実現した。
 また、
SPECIM IQ 1000nm までの波長を分光できるので、将来的には、LED 変更することで測定波長現在の可視域のみから赤外域まで拡げることもできる。

3. 3 校正・補正技術

 校正・補正技術は、従来のコニカミノルタ測色計で用いている技術をベースに、二次元測色に適用するための良を加えた

3. 3. 1 面内ムラ補正

 二次元で正確な測色を可能にするために、出力結果の面内均一性が重要な性能としてあげられる。すなわち、空間的に完全な均一なサンプルを測定した際に、理想的には二次元の各画素で全く同一の測定結果が得られることが求められる。しかし実際の測定器では、照明、受光、センサ感度の不均一性などの要因から、ハードウェア上の工夫のみで完全に均一な結果を得ることは困難である。
 HSI1d
では、工場出荷時に空間分布が均一とみなせる基準プレートを用いて各画素に対して補正係数を算出することで、面内ムラ補正を実現している。また、ロバスト性の向上の観点から、補正係数に対してフィルタリング処置施すことで、測定誤差影響を低減させている。
 Fig.
6に、測定径中心を通る断面で切断した際の相対空間強度分布を示す。補正係数算出に使用した基準試料付近の明度では、面内均一性が確保されることが分かる。一方で、明度が異なる試料では十分に確保されないことが分
り、下記の対応を行った

Fig. 6 Relative difference of Lightness (L*) by position

3. 3. 2 画素依存性のある再帰照明補正

 d:8°ジオメトリなど積分球を用いる照明系では、照明された試料からの反射光が積分球内で拡散反射を繰り返した後、再び試料を照明する再帰照明が生じる。また、測定面の場所によってその影響は異なりうる。
 面内ムラ補正で明度の異なる試料に対して面内均一性が確保されない原因は、再帰照明特性の空間依存性が影響していると考え、
HSI1dでは、工場出荷時に複数の基準プレートを使用して各画素に対して再帰照明補正係数を算出して、機器を補正した。
 Fig.
7は、補正の有無による面内均一性を示す。面内ムラ補正に加えて、画素依存性のある再帰照明補正を与えることで、明度が異なる試料に対しても測定器の面内均一性が確保されたことが分かる。この両者の補正により、高い測定性能を実現した。

Fig. 7 In-plane color standard deviation in SCI mode with and without correction

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今後のイメージング分光測色の展開

 イメージング分光測色計HSI1dにより、微小面色測定の効率化が可能になった。今後は更なる効率化を実現するために、より容易にデータを取得する領域を選択する、あるいは解像度向上するなどのアプリケーションソフトウェアおよびハードウェアの改善を行っていく必要があるFig. 8 のように、面内での色の均一性評価や欠陥検査、表面状態による風合いなどの二次元で高い測色性能が必要な評価が実現できる可能性がある。今後は、今回
開発した
イメージング分光測色計HSI1dを用いて、顧客密着によりニーズ活用方法を探り、新たなソリューション提供につなげていきたい

Fig. 8 Examples of applications where 2D color measurement is desired

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