お問い合わせはこちら

協業や技術に関して
お話しましょう

匠の勘・コツや官能評価をデータで捉える新しい評価ソリューション『FLAIRS』

相互作用を捉えた無数の発光パターンをAIで解析し、数値では捉えられない差異を顕在化

センシング×AIで複雑なものを複雑なまま評価するソリューション

このソリューションでは、液体や流動体を主な対象として、従来の方法のように特定の要素に注目するのではなく、対象全体の状態や機能を包括的に捉えることができます。コニカミノルタは、化学的なセンシング技術とAIを組み合わせることで、独自の新しい評価手法を提供します。

従来の分析や品質評価は、特定の影響因子を数値で捉えることが一般的でした。しかし、この方法では、影響因子の特定に多大な工数がかかるだけでなく、想定外の因子が及ぼす影響を見逃してしまうことがありました。コニカミノルタが開発する新しい評価ソリューションは、AIを活用した帰納的アプローチにより、従来の演繹的な原因追求とは異なり、対象全体の状態を包括的に評価することが可能です。こうした、特定の物質だけでなく複数の物質に対して感度を持ち、反応パターンを解析して対象全体を評価する測定方法は交差反応型と呼ばれます。これは従来の分析思想に革新をもたらす、画期的な方法と言えます。

このソリューションが特に有効と考えられるのは、主に2つの領域です。1つ目は「予期せぬ異変が発生する可能性がある領域」です。特定の評価項目に依存せず、対象全体の状態を捉えるため、医薬品や天然素材、生物由来の原料などにおける品質劣化を市場に出回る前に検知することができ、真贋判定にも応用できます。この方法により、従来の評価手法では見逃される可能性のある偽造品にも対応することが可能です。

2つ目は「職人技や官能評価の代替」としての利用です。現在、人の感覚や経験に依存しているプロセスにも、このソリューションを導入することで、評価の一元化やばらつきを抑えることが期待されます。

この新しいソリューションを、私たちは「FLAIRS」と名付け、実用化に向けて開発を進めています。FLAIRSは「FLuorescent Analysis with Inductive Recognition System」の略称であり、今後さらに多様な領域での応用が期待されます。

技術概要

本ソリューションを実現するためには、主に2つの技術が不可欠です。1つ目は、あらゆる変化を捉えられる汎用的な蛍光プローブの開発技術です。2つ目は、取得した相互作用データを効果的に処理し、AIに解析させるためのノウハウです。

蛍光プローブに関しては、コニカミノルタ独自の分子ライブラリーに登録されている300種類以上のモノマーから、最適なものを組み合わせて作り分けています。これにより、無数の蛍光プローブを作成でき、その中のいずれかが反応して対象との相互作用を逃さず捉えることが可能です。この無数の蛍光プローブを生成する技術は、コニカミノルタが長年の製品開発を通じて培った分子合成の技術力によって支えられています。また、測定対象に応じた特定の相互作用を捉えるため、新しい分子を設計・合成する技術とノウハウも備えています。

データ解析においては、弊社のデータサイエンティストたちのノウハウと提案力が大きな強みとなっています。コニカミノルタは、自社の開発・生産現場でのマテリアルインフォマティクス(MI)やプロセスインフォマティクス(PI)の実践、およびお客様の課題解決に取り組む中で、データの計測や有効な解析のためのデータ選別に関する豊富な経験を積み重ねてきました。本ソリューションは、測定対象に合わせて最適なチューニングを行う、オーダーメイド型の評価手法です。チューニングのプロセスにおいても、お客様と協力しながら課題を共有し、その解決策をAI解析に反映させる技術を最大限に発揮しています。

適用例:偽造薬の真贋判定

本システムの実施例として、海外で流通している正規の医薬品と、その模倣品である偽造薬を測定したケースがあります。偽造薬は、どのような成分が含まれているか分からないうえ、正規品に似せて作られることが多いため、従来の測定手法では、適切な測定方法を特定すること自体が困難でした。さらに、従来手法では対象物の一部の成分や特徴しか捉えられず、特定の評価項目だけでは検査をすり抜ける偽造品が出てしまう可能性があり、特に安全性が最優先される医薬品の分野では大きな課題となっていました。

本システムでは、多様な蛍光プローブを使用して対象物の特徴を漏れなく捉え、多次元データ空間上で正規品と偽造品を解析することが可能です。さらに、今回の実施例では、システムに事前学習を行わない状態で測定を行いました。偽造薬に関する事前情報を一切与えない状況であっても、未知の偽造品に対応できる汎用的な評価システムであることを実証しています。この結果、本システムは、事前に特定の情報を与えずとも偽造薬を正規品から確実に区別できることが確認されました。

このように、本システムは事前知識に依存せず、多様な蛍光プローブとAI解析を活用することで、従来手法を超える高精度な真贋判定を実現しています。これは「想定外の異変が発生しうる領域」に対して、FLAIRSを適用した成功事例の一つです。

この技術が該当するカテゴリ
(クリックするとそのカテゴリの技術を一覧で見ることができます)

このページを共有する